【失敗という発見】
補給エネルギーの内容について、出来る限りの試行錯誤を尽くした。
5日前、8kgの水歩荷(みずぼっか)を背負い、山に入った。
目的は、何度も山での検証を行い、試行錯誤の末に配合を完成させた1000kcalの特製ドリンク「SPD」の最後の実践検証である。

しかし結果は、3登目でまさかのハンガーノック(極度の低血糖・エネルギー枯渇状態)に陥ることとなった。
理論上は完璧なカロリー計算と身体への負担の少ないナチュラルなものであったとしても、高負荷の環境下において、私の内臓と代謝システムには「液体による大量のカロリー摂取」は向かない。
その事実が、身体の拒絶反応をもって完全に証明された瞬間だった。

【実績】
そして今日。未だハンガーノックによるダメージが抜けきらない中ではあるが、行動食を従来のジェルや固形物に切り替えて、再び山で検証を行った。

結果は明白だった。数年間、共に過酷な山々を越えてきたという「実績」のあるものは、やはり消化吸収のサイクルが私の身体に最適化されており、圧倒的な信頼性がある。
自身の内臓疲労や代謝機能と徹底的に向き合い、最も大切なエネルギー源における、私にとっての「現時点での最適解」を再び導き出すことができた。

同時に、未だ痛みの残る修復途上の両脚の靱帯に対しても、テーピングの貼り方を毎回変え、着地衝撃と身体の感覚をすり合わせながらミリ単位の実験を繰り返している。

【取捨選択】
この1ヶ月は、行動食も装備も新たなものを積極的に取り入れ、実戦テストを繰り返してきた。
ひとつでも新たな発見があればそれで良いという考えのもと、見事に機能し採用されたものもある一方、今回の特製ドリンクのように「除外」という判断を下したものも数多くある。
机上の空論ではなく、実際の山での身体の反応という「事実」だけを基準に、冷静に取捨選択を行った。

【流動する正解】
徹底的な検証を経て、見えてきたことがある。
物事に「正解」はきっとある。
しかし同時に、絶対的な正解は「ない」のだ。
気温、湿度、疲労度、内臓の状態。
最適な装備や補給は、その時の自分と、タイミングと、場所によって常に変動する。

過去の成功体験が、次の山でもそのまま通用するとは限らない。 固定された正解に固執するのではなく、刻一刻と変わる状況に対し、その瞬間の最適解を感じ取り、柔軟に適応していく能力こそが最も大切なのではないか。

【積み重ねの果てに】
身体の適応も、装備の洗練も、一朝一夕には成し得ない。トライ&エラーという地道な作業を何度も繰り返し、ようやく見えてくる景色がある。

小さな検証と決断の反復が、やがて強固な装甲となる。
その積み重ねの果てにしか辿り着けない場所へ向かう過程こそが、面白いと感じる時間だ。

