『上善如水』〜奥駈への道 第十回〜

いよいよ明日、大峯奥駈道へ出発する。

これまで、装備の徹底的な軽量化から、食事管理、怪我をカバーするための生体力学的な検証まで、自分なりに考えうる限りの準備をしてきた。

この過酷な修験道を踏破するための試行錯誤を、ひたすらに積み重ねてきた日々だった。

けれど、大峯という深く険しい自然の中で、天候や気温、小屋の状況、そして刻々と変わる自分自身の体調を100%コントロールすることなど、絶対に不可能だ。

準備というものは、本番で予定通りに事を進めるためのものではなく、想定外のトラブルや「不完全な状況」に直面した時に発揮する、『適応力』を育んでおくものだと、私は思う。

リスクを受け入れ、適応しながら前へ進む。

古代中国の思想家、老子の言葉に「上善如水(じょうぜんみずのごとし)」という教えがある。

最高の在り方とは、水のように自らの形を固定せず、環境に合わせて柔軟に変化し、決して止まることなく流れ続けること。

これまで「選択と集中」で練り上げてきた計画と実践。

だが、ここから先は「理論」という硬い氷を、自らの手で溶かしていく。そして、大峯の起伏や自分自身の痛みに合わせて、どこまでも柔軟に適応する『水』になる。

この極限の道のりを、ひとつの壮大な音楽のように、最後まで奏で切れるよう、全力を尽くしてきます。

いざ、大峯奥駈道へ!

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