あの岩場での転倒による靭帯損傷から、およそ1ヶ月が経過した。
損傷した組織の修復には物理的な時間を要する。
そのため、現在もかつてのように、思い描くままに山を駆け回るような山行はできていない。

長距離山行へ向かえない日々、そして身体を極限まで追い込めない状況は、本来であれば強いフラストレーションを生む。
しかし、行き場を失ったその「動けないエネルギー」は、私をより重要な道へと導いてくれた。
それは、毎日限界まで「学び」と「試行錯誤」に時間を充てることである。

【気力から、論理へ】
気力と体力に頼るのではなく、自身の内側と装備の細部に、かつてないほどの解像度で向き合うことができている。
生体力学に基づいた身体の使い方の見直しや、弱点であった臀部周りの筋力強化。行動食の栄養素(脂質代謝と糖質代謝のバランス)や摂取タイミングの最適化。そして、装備の1グラム単位での軽量化と、パッキング術の再構築。

山を走れない分のすべてのエネルギーを、これら「極限の準備」へと注ぎ込み続けた。
【停滞ではなく、進化のプロセス】
もし怪我をせず、順調に山を走れていたならば、私はこれらの細かな、しかし致命傷になり得るエラーに気づかないまま、大峯の奥深くへと足を踏み入れていただろう。
動けない時間は、決して「停滞」ではなかった。
過去の自分の粗削りな部分を一度解体し、論理的かつ緻密に再構築するための、不可欠なプロセスだったのだ。
結果的に、思うような山行ができなかったこの1ヶ月間は、私という人間、そしてトレイルランナーとしてのこれからを大きく「アップデート」させる、新しい一歩の出来事となった。

大峯奥駈道という超長距離の修験道は、体力だけでは決して越えられない。
知性と論理、徹底した準備、そして「巡り来る運」が揃って初めて、生きて帰ることができる道だ。
怪我がもたらしたこの大きなアップデートを基盤に、さらに学びと準備を積み重ねていく。
