「怪我の功名」〜奥駈への道 第三回〜

物事には、おおよそ『原因と結果』がある。
それを見つめ直す、良いキッカケとなった出来事があった。

2週間前の山行。
急な下りの岩場でのちょっとしたミスからバランスを崩し、3回転する大転倒をした。両膝や太腿、腕、背中を激しく強打し、特に左脚の靭帯と骨膜を大きく損傷してしまった。

これまでも、学びを大切にし試行錯誤を積み重ねてきたが、厳しい山行になればなるほど、自分なりの「脚力」と「気力」に頼りきっていた節がある。

だが、最後は気力で乗り越えられてしまうが故に、細部にある自分の欠点に気付かず、正面から向き合うことをおろそかにしていたのだ。

もしこの怪我がなければ、今までと同じ自分のまま、成長を先送りにしていただろう。
困難はチャンスであり、新しい世界への入り口。
着実に、大峯奥駈道への道が拓けていると感じている。
 

本番まで、残り1ヶ月。
怪我により「身体は思うように動かせないが、頭は動かせる」という時間と環境ができた。

今まで気力と体力で乗り切っていたことを改善するチャンスを与えられたのだ。

小さなことを疎かにせず、ひとつひとつ見直して改善していく。
時には、立ち止まることの大切さを、今身をもって実感している。

身体のエラー(筋力不足や使い方の癖)を「気力」という精神論でカバーし続けていれば、100kmを超える超長距離の過酷な環境において、必ずどこかで物理的な破綻(怪我)をきたしていたはずだ。

今回の怪我がなければ、これらに気付かないまま大峯に入り、確実に挑戦は途中で崩れていただろう。

まさに『怪我の功名』。

まだまだ成長していく。

記憶と現実のズレを埋める「修験」の入り口 〜奥駈への道 第二回〜

昨日は、厚い雲と予想外の強風。
凍える寒さに阻まれ、2時間・累積1,000mほどで切り上げざるを得なかった。

そして本日。
天候は一転、穏やかな晴れ。里山縦走トレーニングへ。

開始早々、脳内メモリーにある「かつての軽快な動き」と、目の前の「動かない身体」のギャップに愕然とする。
弱った心肺機能、鉛のような足取り。
それを『意志の力』だけで無理やり前進させている感覚だ。

記憶と現実のズレを埋めるには、逃げずに定期的な刺激を入れ続けるしかない。

たった5時間半の行動で消費エネルギーは3,000kcal。
胃酸が込み上げ、内臓まで悲鳴を上げている。
この数字と疲労感こそが、今の自分の現在地を冷徹に物語っている。

目指す大峯奥駈道。
一日の行程で、連日、今日の倍以上の強度(時間・距離・累積標高)が求められる修験の道。

正直に言えば、今は今日の内容だけで精一杯だ。 

だけど、それでいい。
このボロボロの感覚から、すべては始まる。 

残り六週間をかけて「奥駈の身体」へと再構築していく。

辻褄が合うその日まで、一歩ずつ。

人生の醍醐味は、『過程』にこそ存在するのだから。